治病の話(平成30年8月分法話)
昔、大長者スダッタの親友にコウセという金持ちがいた。
彼は、仏の道を信じていないし、
多くの医術も信じない。
ある時、彼は重病にかかって床についた。
皆が心配してくれるが、
「私は太陽や月を敬い、君父にも忠孝を尽くしている。
例え、病気になっても、
これ以上、尽くすべき手段はないのだ」
と、自分の信条を語り、皆の心配を聞き入れない。
その時、スダッタがお釈迦様を招待してお話を聞くように勧めた。
コウセはスダッタの好意を喜び、
お釈迦様をお招きすることになった。
コウセを見舞われたお釈迦様が教えられます。
「人間の世の中には、
横死するのに三つの場合がある。
病気になって治らないで死ぬのはその一つである。
治っても慎まないのはその二である。
自分の考えにまかせて、
事の正邪をもほしいままに振る舞うのはその三である。
このような病人は、
例え、月日でも、天地、先祖、君父でも、
どうすることも出来ないのである。
であるから、
病気になったならば、正しく道を明らかにし、
よく場合に順応して安きを求めなければならない。
第一に、身体の悪寒や熱気は医薬を用いて治し、
第二に、多くの邪な悪鬼が仏道の修行を妨げるものには、
仏の教えや戒めをもって退治し、
第三に、賢人と聖人とに仕え、貧困の者を施し救って
徳を神々に積み、福を全ての生物に与えねばならぬ。
かく、大知恵をもって一切の障害を除き去るならば、
現世は安らかに、後世は極楽浄土に生まれること疑いない」
と。
コウセは仏のねんごろな説法を聞いて、
心の迷いも解け、暗雲も去って、
キラキラする太陽を久し振りに見るような心地がした。
そこで、病気のためには良医の治療に任せ、
心の治療は仏の教えに従うことにした。
すると身は静かに落ち着き、
病気は快方に向かって心身ともに安定を得た。
それ故ますます精進したので、
ついに、スダッタと同じく在家として、
悟りを開くに至ったということである。
(仏教説話文学全集から)
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お釈迦様は医術を否定されておられません。
体はお医者に。
心は仏に。
私達が心身の安定を得る方法を教えて下さっています。
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