心の刀を取り除け(平成30年7月分法話)
お釈迦様ご在世の時、
貧乏な夫婦がおりました。
夫婦そろって、物惜しみをして、
仏の教えを信じようとしません。
そこで、お釈迦様はこの夫婦を憐れみ、教化しようとされました。
貧しい修行者の姿となり、
夫婦の家の前に立ち、食を乞われました。
妻が在宅で、対応に当たります。
妻は、修行者をののしり、食べ物を与えることはありません。
そして、「死んでも、あげないよ」と妻が言うと、
お釈迦様は自身を死人のような姿に変えます。
驚いて逃げる妻をしり目にお釈迦様は近くの木陰に行かれ、座られました。
妻は帰宅した夫に一部始終を話します。
怒った夫は、弓や刀を持って、お釈迦様の元へ。
すると、お釈迦様は、自分の周りに神通力で城郭を作ります。
夫は、城郭の中に入れません。
「門を開けろ」と言う夫に対して、
「門を開けてやるから、お前の持っている弓や刀を捨てなさい」と。
弓と刀を捨てたが、夫は心中で「げんこつで殴ってやる」と。
門を開けないお釈迦様に、「なぜ開けぬ」と。
するとお釈迦様は、
「お前の心の中にある悪意の弓や刀を捨てよ、というのだ。
手に持っている弓や刀を捨てなさいと言っているのではない」と。
こう言われた夫は「この修行者は聖者に違いない。私の心中を見抜いている」と思い、
心から懺悔しました。
夫は、妻にもよく話し、二人して仏弟子になりました。
お釈迦様は、二人に教えられます。
「学んでいて嫌にならず、仏の道を守って怠らず、
徳と知恵を持つならば、自ら悟りの境地に入ることが出来る」と。
そして、偈を説かれます。
「多く聞いてよく学び、精進して怠らないならば、
こころ堅固にしておかされず、戒めと知恵はともに完成す。
多く聞けば心あきらかに、心あきらかなれば知恵を増し、
知恵あれば義に通じ、義に通じれば修行成る。
多く聞いて憂いなく、こころ定まりて喜び生じ、
よく甘露の法を説き、自ら涅槃にいたるなり。
聞いて道法得る故に、疑い解けて正を知り、
非法不正を捨て去りて、やがて不死にぞ至るなり」
(仏教説話文学全集から)
☆ ☆
仏様に嘘、偽りは通じない、と。
言葉や態度だけでなく、心の在り様が一番大事であると言われます。
その心を作るためには、
仏の教えを多く聞いて、仏の教えが正しいのだと信じて、疑わず、
仏の教えの通りに実行することが大事。
すると、自分の行為・言葉・考えが正しいものとなる。
そして、悟り(不死)に至る、と。
0コメント